本とわたしを離さないで

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2017.10.18ブログ

藤本徹朗読会「大阪で、青葱を切る」を終えて

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落ちてきた空の

ひとかけらを持って

幼子が走りよってきて

ねえみて!

と言う

きれいだねえなんだろうねえ

とあなたなら言うだろう

それがなんなのか

知っていたとしても

(ひかりをつんで)

 

言葉が風景を描き、既に缶ビールを3本で飲んでいた藤本さんの声はどこか深い所からはっきりと聞こえていた。

灯りを消した店内で藤本さんの声だけに耳を澄まし、僕らは何を見るでもなくただそれぞれの脳裏に浮かんだ風景を見つめていた。

それぞれの「あなた」が脳裏をよぎり、それぞれの「ひとかけら」を思い描いていた。と思う。

僕は言葉は生きているんだなあと思いながらそれらが皮膚に付着して沈んでいくのを感じていた。

藤本さんは「風景や情景を書いて、その奥に行きたい」と仰っていた。

そうすると紙に印刷された文字は入口ということになる。

人は詩や物語を読むとき、それぞれの入口に立っている。

その先は目に見えなけれど、言葉や記憶を頼りにそれぞれで進んで行くのだろう。

 

朗読が終わって一緒に来ていた藤本さんの奥さんに感想を聞いたら

「たまにしか聞かないけど、とても良かった。青葱聞いているときは泣いちゃったよ」と言って照れたように微笑んでいた。

僕はそれがとても印象的で「その奥」に彼女は行っていたんだろうと思う。

忘れられない夜になった。

 

 

 

 

 

 

2017.09.02イベント

【ご予約受付中】10/7(土)藤本徹 朗読会「大阪で 青葱を切る」 ゲスト:池田彩乃

無題

店主が一読して惚れ込んでしまった詩集「青葱を切る」

その魅力を伝え続けて半年以上が経ちました。

お陰様でたくさんの方に手に取って頂き、反響を頂戴しております。

(詩集は藤本さんのお手持ちの分も含めて全て完売しております)

そしてこの度著者である詩人、藤本徹さんを東京からお招きして朗読会を催すこととなりました。

ゲストには当店でも詩集「ほとり」「発光」「私は祝日」でお馴染み、主に関西で活動する詩人池田彩乃さんです。

藤本さんと池田さんによる二人の詩の朗読会。

一夜限りのイベントです。

皆様のご来店をお待ちしております。

10/7(土)18時より

 

ご予約は店頭、お電話、メールにて承ります。

お名前、ご連絡先、人数をお知らせくださいませ。

06-7173-9286

info@blackbirdbooks.jp

参加費:1000円+ワンドリンクオーダー

 

 

2016.12.30ブログ

谷川俊太郎と誕生と温もり

谷川俊太郎さんの「生きる」という詩がある。

初めて読んだのは大学を卒業して働き始めたころだったか。ある女性に教えてもらった。

今まで真剣に詩を読んだことのなかった僕はたった一行でこんなにも心を激しく動かし、かつ穏やかにするものなのかと感動した。

以来、その詩が入った詩集を買い求め、本はいつもすぐ手に取れるように本棚に収まっている。

詩はふと思い出した時にさっと読めるのがいい。

谷川さん、「生きる」を一部引用させて頂きます。

 

生きる

生きているということ

いま生きているといこと

それはのどがかわくということ

木もれ陽がまぶしいということ

ふっと或るメロディを思い出すということ

くしゃみすること

あなたと手をつなぐこと

~~~

生きているということ

いま生きているということ

いま遠くで犬が吠えるということ

いま地球が廻っているということ

いまどこかで産声があがるということ

いまどこかで兵士が傷つくということ

いまぶらんこがゆれているということ

いまいまが過ぎてゆくこと

 

生きているということ

いま生きているということ

鳥ははばたくということ

海はとどろくということ

かたつむりははうということ

人は愛するということ

あなたの手のぬくみ

いのちということ

 

先日、師走に入って寒さが厳しくなり始めた頃、友人夫妻に女の子が生まれた。

毎日が忙しく、生きるのが困難で、世界が混乱しようと、子どもが生まれたという知らせはいつも温かい。

人の体温ほど生の実感に触れるものはなく、それは幸せと結びつくものかも知れない。

誕生した女の子の名前は「ぬくみ」と言うそうだ。

 

utumuku ikiru

 

 

 

2015.06.06ブログ

父と娘のささやかな日々。 黒田三郎 / 小さなユリと

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ある日夏葉社の島田さんからメールで案内が届いて、そのメールにはこんな詩が載せてあった。

———————-

「ハヤクココキッテヨー オトー」

「ハヤクー」

 

かんしゃくもちのおやじが怒鳴る

「自分でしなさい 自分でェ」

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かんしゃくもちの娘がやりかえす

「ヨッパライ グズ ジジイ」

おやじが怒って娘のお尻をたたく

小さなユリが泣く

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大きな大きな声で泣く

 

それから

やがて

しずかで美しい時間が

やってくる

おやじは素直にやさしくなる

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小さなユリも素直にやさしくなる

食卓に向かい合ってふたりすわる

———————-

夏葉社さんが復刊される本は「昔日の客」をはじめ間違いないので、最初から注文するつもりでいたけれど、この詩には早速参ってしまった。

私事ながら僕にも小さな娘がいるので、この私詩を微笑みながら一気に読んでしまったのです。

そんな日々が12篇入った小さな詩集。装画は「小さなユリ」が書いたもの。

この詩集や詩人についての背景をエッセイストの萩原魚雷さんが素晴らしい文章にされ、巻末に小さな手紙のように添えられています。

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そしてその手紙には酔っぱらいおやじと小さなユリが手を繋いで歩いている写真が印刷されています。

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夏葉社さんが完全復刻された1960年刊行の歴史的な詩集。是非手に取ってその紙の手触り、言葉の温度を感じ取って頂きたいのです。

僕はこれから何度この本を読み返すことになるのか、それは娘の成長を見ていくようです。

 

 

 

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小さなユリと

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2015.06.06ブログ

少しずれた別の世界 松井啓子 / くだもののにおいのする日

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どこからかボールがポンと頭に当たって、振り向いたけれど、そのボールはどこにも見当たらない。

そんな不思議な詩集です。

初めに「それではこれは何ですか」という詩があって、あれれ、何だこれは、え、そうなの?という感じでひっくり返ってしまって、そしてすっかりこの詩集に夢中になってしまいました。

 

それではあなたは何ですか

もちろんわたしはりんごです

お皿もフォークもりんごです

あなたも もうじきりんごです

 

不思議です。難しい言葉は何も使っていないのに、何か複雑な間違った扉を開いてしまったみたいで、別の世界に引きずり込まれる感覚です。

著者の松井啓子さんが本の帯に一言載せてらっしゃいます。

「あの頃、この世とそっくりで少しずれた別の世界、について私は考えていたと思うのですが、実は、今もその世界について考えています」

本書は1980年5月21日に刊行されたものをゆめある舎さんが新装復刊されました。

沙羅さんの美しい挿画、マットな感じの黒にくだものが並べられた装丁も本当に素晴らしく、bbbお薦めの一冊です。

夢中になってしまうのは「少しずれた別の世界」に知らない自分が知らず知らず惹かれているのか、行ってみたいのか。どうなんでしょう。

 

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くだもののにおいのする日

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