本とわたしを離さないで

本のこと、お店のこと、日々のこと

2018.11.15ブログ

自分のお店も蝋燭のようなものかも知れないと僕は思った。

ある晩に僕は人間を蝋燭に見立てて夜道を帰った。

人間は蝋燭なのだ。

それぞれの火を灯し、燃え尽きるまで、蝋が無くなるまで、歩いていく。

そうか、自分のお店も蝋燭のようなものかも知れないと僕は思った。

朝、お店に入り、火を灯す。

上手に言葉を照らさなくてはいけない。

夜になると火を消して家へ帰る。

火を灯せなくなったとき、それは自分の命がなくなるとき、あるいは家族に何かあったりお金がなくなったりしてお店を続けられなくなった時だ。

雨風はまさに風前の灯火。火のようにお店も横に揺れる。

けれどただ燃え尽きるのを眺めているわけではない。

蝋燭の良い所はその火を持ち帰ることが出来ることだ。

一日一日、お客さんが火を持ち帰ってくれたのなら(あるいは火を運んで来てくれたのなら)、お店を続ける意味があるのかも知れない。

 

 

2018.11.14お知らせ

11/15(木) 15時閉店

都合により11/15(木)は15時閉店となります。

何卒ご了承くださいませ。

2018.11.13イベント

12/1 sat-12/2 sun 関西蚤の市

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今年も出店致します。

第五回関西蚤の市(会場:JRA阪神競馬場)に出店致します。

出店に伴い、11/30~12/2は店舗の営業はお休みを頂きます。

(通販の出荷もございません。ご注文は受け付けております)

 

2018.11.04ブログ

寺尾紗穂『彗星の孤独』を読んで

<ラジオのニュース>米軍も多大な戦死者を出しましたが、ヴェトコン側も115人戦死しました。

女「無名って恐ろしいわね」

男「なんだって?」

女「ゲリラが115人戦死というだけでは何もわからないわ。一人ひとりのことは何もわからないままよ。妻や子供がいたのか?芝居より映画が好きだったか?まるでわからない。ただ115人戦死したというだけ」

ジャン=リュック・ゴダール『気狂いピエロ』

 

ジャン=ポール・ベルモンドはそれに対し「それが人生さ」と続ける。

僕はこの「彗星の孤独」に収められた「ひとりの祈り」というエッセイを読みながら遠い昔に観たこの映画のセリフを思い出していた。

阪神淡路大震災をテーマにした村上春樹の短編集「神の子どもたちはみな踊る」でもこの台詞が冒頭で引用されている。

アンナ・カリーナ演じるこの女性(役名は忘れた)のセリフは戦争の恐ろしさ、ひいては国家やメディアの恐ろしさを如実に表している。

寺尾さんはこのエッセイである出来事から一般市民の多様さや、ひとりの人間にとって戦争とは何だったのか、その意味を考えなければいけないと仰っている。

津波で原発は被害を受けたが必要だ、沖縄に基地は必要だ、増税は必要だ、とそれを扇動する国家とメディア。

国単位の思考に引きずられることなく、個としてこれらのことについて考えていくべきだと僕も思う。

『国というのは、社会というのは、ひとりの人間からできている。そしてひとりの小さな声は決して「とるに足らないもの」ではない。』

ひとりの読者としてこういう事を断言出来る書き手に出会えることは幸せなことだ。

こういう言葉を書くひとりの母親、ひとりの音楽家、ひとりの作家がいるということ。

僕は作家の祈りが本を開くと手元に届くような、そんな本を届けて行きたい。

この本を読んだ読者ひとりひとりの声が聞こえるようになればそれはきっと良い世の中だろうと思う。

suisei

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018.10.24イベント

11/7~11/25「港の人」フェア

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bbbでは11/7(水)から11/25(日)まで鎌倉の出版社「港の人」のフェアを開催致します。

「港の人」は代表の上野さんが中心となって鎌倉の海岸近く、由比ガ浜という所で詩集や歌集、句集、エッセイなど主に文芸の本を刊行されています。

今年で21年目になるそうですが装丁にこだわりながら一貫して生きることの「切実さ」を問う本を編まれて来ました。

港の人の本はまさに言葉の海。私にとってそれは凪の海で、光を浴びた穏やかな水面の下にある無数の生き物のような言葉です。

今回30タイトルを超える本を一堂に紹介致します。

サイン本や購入特典 (荒木経惟による荒木陽子ポートレイトのポストカード、蟲文庫の田中美穂さんの苔の栞セット)をご用意します。

この機会にどうぞご来店くださいませ。

「港の人」の書籍はこちらからもご購入頂けます。

 

余談ですが、

私が「港の人」を強く意識した3つの本があります。

こちらも並ぶ予定ですのでどうぞお楽しみに。

『きのこ文学名作選』(絶版)

『胞子文学名作選』

穴の空いたカバーやページ、著者ごとに違う紙、縦横無尽に広がる文字。

既成の文学集(のみならず本全般)の概念を打ち壊した製本とそれでも絶妙なバランスと美しさを持ち、突拍子のないテーマを掲げたアンソロジーに衝撃を受けました。

 

『珈琲とエクレアと詩人 スケッチ北村太郎 / 橋口幸子』

社名「港の人」の由来となった詩集を創った北村太郎と過ごした鎌倉の日々。

遠い記憶を辿るような美しい文体は個人的にも味わい深く、波のような余韻が続く読書体験でした。

この本については続編とも言える夏葉社の「いちべついらい」と合わせて読むことをお勧めします。

 

『ほとんどみえない / マーク・ストランド』

村上春樹訳の「犬の人生」で日本でも知られることとなったカナダ出身(アメリカへ移住)の作家、マーク・ストランド。

彼の最後の詩集です。知られることになった、とは言えほとんど無名とも言える作家の、しかも詩集を手触りだけで読んでみたいと思わせるような本に仕上げていることに感激しました。

 

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