2017.10.18ブログ
落ちてきた空の
ひとかけらを持って
幼子が走りよってきて
ねえみて!
と言う
きれいだねえなんだろうねえ
とあなたなら言うだろう
それがなんなのか
知っていたとしても
(ひかりをつんで)
言葉が風景を描き、既に缶ビールを3本で飲んでいた藤本さんの声はどこか深い所からはっきりと聞こえていた。
灯りを消した店内で藤本さんの声だけに耳を澄まし、僕らは何を見るでもなくただそれぞれの脳裏に浮かんだ風景を見つめていた。
それぞれの「あなた」が脳裏をよぎり、それぞれの「ひとかけら」を思い描いていた。と思う。
僕は言葉は生きているんだなあと思いながらそれらが皮膚に付着して沈んでいくのを感じていた。
藤本さんは「風景や情景を書いて、その奥に行きたい」と仰っていた。
そうすると紙に印刷された文字は入口ということになる。
人は詩や物語を読むとき、それぞれの入口に立っている。
その先は目に見えなけれど、言葉や記憶を頼りにそれぞれで進んで行くのだろう。
朗読が終わって一緒に来ていた藤本さんの奥さんに感想を聞いたら
「たまにしか聞かないけど、とても良かった。青葱聞いているときは泣いちゃったよ」と言って照れたように微笑んでいた。
僕はそれがとても印象的で「その奥」に彼女は行っていたんだろうと思う。
忘れられない夜になった。
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