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2013.01.07ブログ
つげ義春の短編「紅い花」を読んだ時、こんな漫画があるんだと天地がひっくり返るほど驚いた。今までに読んだどんな漫画ともつげ義春の漫画は違う世界を描いていた。
「紅い花」は思春期を迎え身体の異変に気付く少女とそれを不思議そうに見守る少年の優しい心を描いた名作だ。少女の身体と川を流れる大きな紅い花が絶妙に狂おしく絡んでくる。
後日、早川義夫さんの本を読んでいたら、早川さんが本屋をやっていた頃ブックカバーにこの「紅い花」の最後のシーンを使っていると知って嬉しかった。
何故なら僕はつげさんの漫画も早川さんの音楽や文章も大好きだったから。
2012.11.19ブログ
バガボンドが再開しました。ずっと楽しみにしていました。
どんな展開になるのか予想も出来なかったのですが、期待通り面白かったです。わくわくしました。
伊織という少年と泥だらけになって畑を耕すシーンが出てきます。(とにかくこの34巻は土とか泥とかのシーンがやたら多い) 耕しては雨で崩れて耕して、それだけのシーンがしばらく続く。頭や目で読むというよりも身体で読んでいるような感覚になりました。
井上さんは「SWITCH」のインタビューで物語にはあまり興味がない、と言っています。スラムダンクでさえ、ただいい試合を描きたい、いいプレイを描きたい、みたいなことを仰ってました。宮本武蔵、という人の在り方を描きたい、物語というよりは詩に近いと思う、と。ほとんど即興に近い感覚で描いているんだろうな、と僕は思いました。
モードジャズみたいだ、と思ったのです。基本の筋(物語)はあるけれど、ちゃんとそこへ戻ってくるならどこへ行っても、自由にやってもいいよ、みたいな。「絵」にこだわっているのは一目瞭然だし、本人も公言しておられるから、ストーリーやセリフよりもまず「絵」が飛び込んでくる。セリフを目で追うよりも「絵」を一枚一枚めくっているような感覚になるのでどうしても音楽のように身体的なリズムが出てくる。だから僕はわくわくしているのだと思います。「絵」だけはもう自由に本当に楽しそうに描いている。その楽しさが伝わるから余計わくわくする。同時に「命」を扱う漫画なので更にずっしりと心に響く。巌流島まで描くのか、いつ終わるか分からないけれど、重石のように心に残る作品になりそうです。
僕はガチガチのジャンプ世代ですが、井上雄彦さんと荒木飛呂彦さんだけは小学校から今でもコミックを楽しみにしています。
2012.03.14ブログ
use 5 mg
「ヒストリエ」が今最も新刊が待ち遠しい漫画の一つ。待ち遠しくてたまにこの二冊を読み返す。この二冊を足掛かりにして「ヒストリエ」の構想を進めて行ったのが分かる資料であり、歴史漫画の短編としても凄く楽しめる内容だ。
共に僅かにしか出てこないが歴史上戦の天才とされる人物がそれそれ一人ずつ出てくる。たった一人でローマを相手に戦ったカルタゴの将軍「ハンニバル」と負け知らずの軍神「上杉謙信」だ。時代も違えば国も違う二人をどこまで話の核と考えていたのかは分からない。共に数ページしか出てこないが極めて冷たい目線で描かれている事は間違いないと思う。
感情を表さず(あったとしてもそれは怒りに限られる)、戦に勝つ事のみしか考えぬまたは考えられない人物として。
それを象徴するように「雪の峠」の表紙に描かれている謙信には「顔」がない。
対照的に主人公は感情豊かで人間味の溢れる人物として登場する。彼らは戦を勝ち負けではなく、どうやって終わらせるのか、そして終わった後に何が待っているのかを考えているように思える。そういった考えは「怒り」の向こうにある「優しさ」と「悲しさ」を持った人間にしか成す事が出来ない、と岩明さんは言っているように思う。僕はその「優しさ」と「悲しさ」の目線に心奪われている。
「ヒストリエ」はまだ序盤だがこれからそういった感情が描かれるのが楽しみでならない。
世界中で読まれればいいな、心から思う。
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