本とわたしを離さないで

2012.03.14ブログ

岩明均 / 雪の峠・剣の舞/ヘウレーカ

「ヒストリエ」が今最も新刊が待ち遠しい漫画の一つ。待ち遠しくてたまにこの二冊を読み返す。この二冊を足掛かりにして「ヒストリエ」の構想を進めて行ったのが分かる資料であり、歴史漫画の短編としても凄く楽しめる内容だ。

共に僅かにしか出てこないが歴史上戦の天才とされる人物がそれそれ一人ずつ出てくる。たった一人でローマを相手に戦ったカルタゴの将軍「ハンニバル」と負け知らずの軍神「上杉謙信」だ。時代も違えば国も違う二人をどこまで話の核と考えていたのかは分からない。共に数ページしか出てこないが極めて冷たい目線で描かれている事は間違いないと思う。

感情を表さず(あったとしてもそれは怒りに限られる)、戦に勝つ事のみしか考えぬまたは考えられない人物として。

それを象徴するように「雪の峠」の表紙に描かれている謙信には「顔」がない。

対照的に主人公は感情豊かで人間味の溢れる人物として登場する。彼らは戦を勝ち負けではなく、どうやって終わらせるのか、そして終わった後に何が待っているのかを考えているように思える。そういった考えは「怒り」の向こうにある「優しさ」と「悲しさ」を持った人間にしか成す事が出来ない、と岩明さんは言っているように思う。僕はその「優しさ」と「悲しさ」の目線に心奪われている。

「ヒストリエ」はまだ序盤だがこれからそういった感情が描かれるのが楽しみでならない。
世界中で読まれればいいな、心から思う。