tag archives : 村上春樹
2017.04.11イベント
blackbird books 読書会
『村上春樹について語るときに我々の語ること』
BOOK1 「騎士団長殺し」
4/21 (Fri) 18:30~20:00
定員:若干名
会費:500円(お菓子・ドリンク代)
店頭、メール、お電話にてご予約受付致します。
特に難しいことは考えておりません。
本の感想と村上春樹について語る会です。
お気軽にご参加頂ければと思います。
2016.08.06イベント
イラストレーター安西水丸の未発表のシルクスクリーン作品をまとめた作品集『ON
THE TABLE』の発売を記念し、ささやかな作品展を開催いたします。
『ON THE TABLE』は安西さんが1987年~1991年にかけて、個展のためだけに描き下ろしたシルクスクリーンの作品を一冊にまとめたアートブックです。
収録作品のおよそ9割が初めて書籍化されました。
今回の展覧会では、収録作品から10点のシルクスクリーンを展示いたします。一部の作品は販売も行います。
先日「美術館えきKYOTO」で開催された『イラストレーター安西水丸』展には出展されなかった貴重な作品も含まれます。
作品集『ON THE TABLE』は店頭、WEBにて好評発売中です。
水丸さんのシルクスルクリーン作品30点を収録。美しいブルーのクロス装が目を引きます。
デザインは雑誌『POPEYE』のアートディレクターとして活躍する前田晃伸氏。
アートブックとしてもちろん一つの美しいプロダクトとして部屋に収めておきたい一冊です。
blackbird booksでは2016年6月の移転に伴い、店内に小さな展示スペースを設けました。
今回その展示スペース第一弾として安西水丸さんの展覧会が出来ることを大変嬉しく、また感激しております。
高校生の頃、村上春樹の短編小説「蛍・納屋を焼く その他の短編」を手にとった時が安西さんを知った最初だったと思います。
細いシンプルな線の絵がいつも枕元にありました。
そんな水丸さんの原画がお店に飾られることとなり(蛍の表紙とは違いますが)、その絵に囲まれて仕事をし、
見に来られた方々とお話出来ることを思うと、興奮を隠せずにはいられないのです。
皆様のお越しをお待ちしております。
2013.04.28ブログ
村上春樹の作品で一番好きなものはどれか?
難しい質問ですね。
ビートルズで一番好きなアルバムはどれか選ぶ位難しいです。
「世界の終わり」のときもあれば「ダンス・ダンス・ダンス」のときもある。短編にも幾つか大好きな作品があります。もちろん「1Q84」も好きです。
でも、長い間何度も読み返しているのは「ねじまき鳥」かも知れません。
「ねじまき鳥」の何が僕をこんなに惹きつけたのか。
好きなシーンがあるんです。
3部の、もうクライマックス、というシーンです。
突然消えてしまった妻を何とか取り戻そうと主人公は遂にどこかのホテルの一室で妻(と思われる女性)と暗闇の中で対面します。
彼女は暗闇の中で小さなため息をついた。
「どうして私をそんなに私を取り戻したいの?」
「愛しているからだ」と僕は言った。
結局のところ(春樹さん風に言えば)、この台詞が言いたかったのだ、と僕はずっと考えています。言うのは簡単だけれど伝えるのは難しい。この言葉を伝えるために実に約1000ページを使っています。このシンプルな言葉を伝えたいがために、暴力があり、死があり、性があり、戦争があり、人生で起こりうるようなあらゆる事が怒涛のように主人公にのしかかって来るんです。これは小説家にしか出来ない業ですね。
「愛しなさい」そして「生きなさい」(これはもう一つの非常に重要なテーマだ)と村上さんはずっと言い続けているのだと思うんです。
それっていつの時代にも、どんな人にとっても、大切なことですよね。
2013.01.13ブログ
初めて読んだ時よりも、数年後になって大きな意味や違った感触が浮かび上がってくる本がある。それも読書の喜びの一つだろう。
僕の実家は神戸の西の端の海の近くにある。駅のホームに立つと時折風が潮の香りを運んでくる。子供の頃は夏休みになると実家へ帰り、歩いて海水浴へ向かった。綺麗な海では無かったけれど、子供の頃はそんなこと気にならなかった。海へ潜っては魚を探し、砂浜を歩いては貝殻を拾った。その砂浜は今はもう無い。海は埋め立てられ、巨大なショッピングセンターが建っている。海沿いを走る国道は週末になると渋滞になる。恐らく日本中でこういう風景が見られるのだろう。
村上春樹の短篇集「カンガルー日和」に「5月の海岸線」という短編がある。(恐らく)極めて私的な小説で、主人公は10年ぶりに郷里の海のある街へ帰り、失われた海岸線を目の当たりにし、過去を回想する。海岸線は山を切り崩した砂で埋められ、その上には高層マンションが墓標のように立ち並んでいる。著者も神戸の側の海のある街の出身だ。村上さんはこの小説を80年代初頭に発表している。僕が初めて読んだのは確か90年代後半。その時は、「そうか、そういう風に時代が移り変わって、自分も大人になると過去を懐かしんだりするんだろうな」と思った程度だった。けれど、そんな簡単な問題ではなかった。
今読んでみると恐ろしく暗い小説だ。そして著者の怒りが如実に表に出てきている。ただの回想録で終わらないのはある「死」が物語に深みを与えているからだろう。そして主人公は「予言」をする。その遠く押しやられた海岸線と墓標を眺め、「君たちはいつか崩れ去るだろう」と。
「予言」は80年代を過ぎ、90年代を過ぎて、2010年を過ぎても生き続けていた。失ってしまったものは、自然だけではない。ここに書かれている「魂」のようなものも失ってしまう。
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