本とわたしを離さないで

2017.02.15ブログ

『PERSPECTIVE from an oblique』創刊記念イベント「老いの現在を知るために」を終えて

ある雑誌で読んだ「真実は一つだ。全ては繋がっている。」というスティーヴィー・ワンダーの言葉が好きだ。

真実とは何だろう。

 

本誌は「老いにまつわる人、物、事などをセレクトした情報誌」と謳っている。

介護保険制度の目的である「自立支援」を取り上げるため、何よりも介護の現在を伝えるため、

著者の主観に捕らわれず、斜めの視点から老いを捉えている。

当然介護保険制度の成り立ちや、介護の現在について説明するには過去を振り返らなければならないので、

この創刊号では大和物語の「姨捨」にまで遡り、そこから現在までの老いの歴史、情報を集めている。

ページを開いて読んでいくと浮かび上がるのはここに書かれているのはこの国の成り立ち、家族の物語だということ。

夫婦がいて、父母がいて、子がいる。人が居るところには食べ物があり、社会が生まれ、お金が流れ、政治がある。

老いを語るときこれらの事を避けて通ることは出来ない。

全ては繋がっている。

その事に改めて気づかせてくれる。

そしてどうすれば人間らしく生きられるのか、人間らしく死ぬことが出来るのかを考える時、言葉が生まれ、文学が生まれ、哲学が生まれる。

そもそも老いるとはどういうことなのか?自立とは何なのか?家族とは?夫婦とは?親子とは?

「姨捨」の物語では母を山へ捨てた男は翌日後悔し、再び山から母を連れ戻す。

「楢山節考」では母は自ら山へ入っていく。

「恍惚の人」では社会への疑問が叩きつけられる。

そこにはいつも真実が見え隠れしている。

『PERSPECTIVE』にもちろん答えが書いてあるわけではない。

けれど、その答えを探し続けなければいけない、ということを読後強烈に掻き立てられる。

トークイベントではその問への道のりを言語化する大変な作業があったと思う。

その真剣さが店中に広がりとても濃密な三日間を過ごした。

 

トークイベントで著者の川那辺さんが「どうして本にしようと思ったのですか」と参加者の方に質問を投げかけられた。

僕は川那辺さんが言葉を伝えたかったからだと思っている。

「斜めからの視点」とタイトルにするぐらいだから主観は極力避けているけれど、中から溢れるものがなければ一年かけて本を創ることは出来ないだろう。

ご覧のようにこの本の表紙は絵が全面に描かれ、タイトルも英語で一見何の本か分からない。

「しっかりデザインを作ったのは邪魔をしたくなかった。いつもふとした時にパラパラめくって欲しいから。本は残るものだし、いつも側に置いておけるものを作りたかった」と仰っていたのが印象的だった。

 

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