本とわたしを離さないで

2016.12.30ブログ

谷川俊太郎と誕生と温もり

谷川俊太郎さんの「生きる」という詩がある。

初めて読んだのは大学を卒業して働き始めたころだったか。ある女性に教えてもらった。

今まで真剣に詩を読んだことのなかった僕はたった一行でこんなにも心を激しく動かし、かつ穏やかにするものなのかと感動した。

以来、その詩が入った詩集を買い求め、本はいつもすぐ手に取れるように本棚に収まっている。

詩はふと思い出した時にさっと読めるのがいい。

谷川さん、「生きる」を一部引用させて頂きます。

 

生きる

生きているということ

いま生きているといこと

それはのどがかわくということ

木もれ陽がまぶしいということ

ふっと或るメロディを思い出すということ

くしゃみすること

あなたと手をつなぐこと

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生きているということ

いま生きているということ

いま遠くで犬が吠えるということ

いま地球が廻っているということ

いまどこかで産声があがるということ

いまどこかで兵士が傷つくということ

いまぶらんこがゆれているということ

いまいまが過ぎてゆくこと

 

生きているということ

いま生きているということ

鳥ははばたくということ

海はとどろくということ

かたつむりははうということ

人は愛するということ

あなたの手のぬくみ

いのちということ

 

先日、師走に入って寒さが厳しくなり始めた頃、友人夫妻に女の子が生まれた。

毎日が忙しく、生きるのが困難で、世界が混乱しようと、子どもが生まれたという知らせはいつも温かい。

人の体温ほど生の実感に触れるものはなく、それは幸せと結びつくものかも知れない。

誕生した女の子の名前は「ぬくみ」と言うそうだ。

 

utumuku ikiru