本とわたしを離さないで

2016.08.05ブログ

貝殻拾いとヨーガン レール「On the Beach」

海が好きで夏になると海へ行って泳ぎたくなる。

実家が神戸の海辺の町で幼いころから夏は海と決まっていた。

夏休みになると早い時間から父や母や叔父や従兄弟と海パンにTシャツで海まで歩いていって、遊んだ楽しい記憶がある。

昼まで泳いで焼きそばだとかマクドナルドハンバーガーなんかを買って帰るのだ。

自分に家族が出来ても海が俺を呼んでいるのか、家族の縁でここ数年は毎年白浜に行っている。

 

その本を読む前と読んだ後では風景ががらりと変わってしまうことがある。(映画や一枚の絵でも言えることだけれど)

ある日手に取って以来、ずっと仕入れようかと悩んでいた本があってそれがヨーガン レールの「On the Beach」という本だった。

砂浜に流れ着いたゴミとそのゴミを使って美しいランプを創っていく過程が収められた「On the Beach 1」と

ヨーガン レールが撮したゴムとプラスチックで出来たビーチサンダルの残骸の写真が延々と続く「On the Beach 2」がある。

まえがき「文明の終わり」にある通り、ヨーガン レールの怒りと悲しみが綯交ぜになったような本だった。力強く、そして美しい本だった。

美しい日本に魅せられたヨーガン レールは70年代前半に来日。そして死去するまでの15年ほどを沖縄の石垣島で暮らしていた。

飼い犬と共に貝殻や珊瑚を拾うかたわらで大量に流れ着いてくるゴミを目にすようになる。

自分の最後の仕事と言い切り、そのゴミを美しくかつ実用的なものへ変えていく活動がこの本に収められている。

文はなく写真のみの掲載だが言葉がないせいか沸々とした感情が読み取れる。

シンプルな美しい本だけれど重みのある本だ。

 

この夏も白浜で泳いだ。とても楽しかった。

娘を連れて人気のいない海岸で貝殻をたくさん拾った。

美しい風景の中にも無数のゴミが広がっていた。陽の光が海の底まで届くような美しい水の中にも空き缶やビニールが転がっていた。

そしてそれを毎日掃除している人がいることも知った。

僕が子供の頃遊んでいた神戸のビーチはアウトレットモールに埋め立てられて今はもうない。

 

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