本とわたしを離さないで

2015.12.27ブログ

友人2   年末のご挨拶

僕が親友だと思っているIのこと。

Iとは大学の頃バイト先で知り合った。バイトはあるファーストフードの店でスタッフはほとんどが学生か主婦。

大まかに朝、昼、晩とシフトが分かれていて、僕は晩のシフトにいつも入っていた。必然的にそれぞれのシフトにグループが別れる。

Iは一つ年上でバイトの先輩だった。晩のシフトのグループでよく遊んでいる内に仲良くなった。

Iは飄々とした性格でたまにしかバイトに来ず、遅刻をするが仕事は器用にこなし、年上年下誰とでも分け隔てなく話し、サッカーと音楽が好きで、本を読み、お金に無頓着で、女の子にモテた。

そして彼は恋愛よりも友情を大切にする男だった。

僕がもっと年下だったなら、憧れの先輩に映ったかも知れない。

僕は学生の頃一人暮らししていたからIはほとんど毎日家に来るようなこともあった。

恋の話や将来の話もしたかも知れない。けれど何よりも残っているのは同じ時間を過ごした記憶だ。

ワンルームに篭もるタバコの臭い、取れたての免許で運転する日産マーチ、夜中のボーリング、幾つものライブ、、

 

ある夜中に、Iの運転するマーチで僕の家に向かっていたところへHという娘からIの携帯に連絡があって、帰れなくなったから送って欲しいと連絡があった。

Iは気前よく返事をし、Hを迎えに寄り道するがいいか、と僕に聞いた。構わない、と僕は答えた。

しかし心のなかではIを足に使うなとか、早く帰って寝たいな、と思っていた。

Hと僕は顔見知り程度で親しい間柄ではなかった。僕は面倒なので後部座席へ移り寝たふりをした。

やがて車はHを拾って走りだした。

Hは恐らく僕が眠っているのを確認し、確かこんなことを言った。

何故Y(僕)のような人と仲良くしているのか、愛想がなく、周りに興味がないように見えるし、冷たい人ではないのか。

恐らく彼女が言うことは正しかった。

僕は当時一人で生きているような気になって、高慢で、人見知りで、自分の円の外側を全く見ようとはしなかった。

Iはこう返した。

「Yは一番優しくてええ奴や。勘違いされやすいけどな」

 

その時の言葉を僕はいつも覚えている。僕は目をつぶってずっと寝たふりをしていた。

言葉はいつも僕らを暖かく励まし、冷たく傷つける。

 

今年も一年ありがとうございました。

今夜はIや仲間たちと忘年会です。