2015.12.20ブログ
読書についてよく考えます。読書の持つ有意義について。
関連のなさそうな話から始めると、よくお店の名前の意味は?と聞かれます。
意味はないのですが、ビートルズが好きで、「blackbird」いう曲があるんです、そこから頂戴しました、とお答えすることが多いです。
アコースティックギターで始まるシンプルな曲でポールらしい親しみのある美しいメロディが特徴です。
ビートルズという単語を出すと誰でも、間違いなく、100%、「分かった、この人は音楽が好きなんだ」という顔をされます。
(どんな顔か?試してみてください)
blackbird という曲をたとえ知らなくても、お店や私個人の背景を少しばかりでも掴んで頂いて、納得されます。
ビートルズという言葉のイメージの力強さを感じ取る瞬間です。もう存在しないものなのに。何故だろう。
ビートルズに「Penny Lane」という曲があります。”Penny Lane is in my ears and in my eyes” とポップなメロディが響きます。
blackbirdよりも有名でほとんどの人が聴いたことがあるのではないでしょうか。ベスト盤には必ず収録されます。
彼らの出身地であるリヴァプールにある「ペニーレイン通り」を懐かしんでこれもまたポールが創りました。
不思議なのは私がこの歌を口ずさむとき、耳にするとき、思い出すのは私が過ごした子どものころの「記憶」であり、「風景」です。そして時々ペニーレインってどんなところだろう、と想像してみたくなる。
ペニーレインはおろか、リヴァプールにもイギリスにすらも行ったことがないのに。
音楽の素晴らしさは、力強さは、ここにあります。少し話がそれますが童謡や唱歌、そして演歌がいつの時代にも歌い継がれるのは風景や記憶を歌っているからだと思います。
詩人の長田弘さんは著書「なつかしい時間」(岩波新書)の中で、こんなことを言っておられます。
「わたしたちは風景のなかで生き、そして暮らしています。—自分がそのなかで育てられた風景というものに助けられてわたしたちの経験、あるいは記憶はつくられています。わたしたちの文化もそうです。風景のない文化はありませんし、芸術というものをつねにささえてきたものは、風景を深く見つめる姿勢です」
読書もまた、記憶や風景を巡る旅です。これは過去を振り返ることとは少し違うと私は思っています。
長田さんの言葉をもう一度お借りします。
「読書というのは振り子です。たとえ古い本であっても、過去に、過ぎた時代の方に深くふれた分だけ、未来に深く振れてゆくのが、読書のちからです。そういう読書のちからを取り戻す。思い出す。あるいは、自分のなかに確かめる。そうした未来に振れていく読書のちからが、いまもほんとうはもとめられいるのではないでしょうか」
読書の意味を教えてくれた私の大切な言葉です。それは本屋を続けていきたい、という私の背中を押してくれる言葉でもあります。
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