2015.06.24ブログ
一晩で読み終わって、その余韻がずっと続いている。ずっとこの本について考えている。多くは書けない。
この本には哀しみがあり、死があるわけなんだけど、それでも浮かび上がるのは生の喜びであり、肯定だ。
人の弱さをこんなにも描写しながら、どうしてこんなにも温もりを感じるのだろう。
そんな心地よい余韻がずっと続いている。
それは一重に田村和子さんのあっけらかんとしたチャーミングな魅力を著者の橋口幸子さんがいつも優しく、時には無理だと思いながらも見つめ続けていたからかも知れない。
詩人田村隆一さんとその妻、田村和子さんの家の2階に夫婦で暮らすことになった著者の橋口幸子さん。
橋口さんのスケッチはその間借りするための面接があった1980年1月から始まる。
橋口さんは二人の男性との恋に揺れながら、人には縛られず、喜びも悲しみも正面から向き合う田村和子さんの生きる力を淡々と描写していく。
僕が知るはずのない田村和子さんの笑い声が聞こえてくるようで、皆が暮らしたその家が目に浮かぶようで、その描写力がまたこの本を素晴らしいものにしているのは言うまでもない。
僕が生まれたのは1980年1月で、そのことが余計に自分に取って感慨深いものにしている。
全く脈絡のないように聞こえるかも知れないけれど、生きててよかった、まだまだ生きて行こうと思った。
本当に素晴らしい本に出会えた。
いちべついらい 田村和子さんのこと
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