本とわたしを離さないで

2015.06.06ブログ

少しずれた別の世界 松井啓子 / くだもののにおいのする日

どこからかボールがポンと頭に当たって、振り向いたけれど、そのボールはどこにも見当たらない。

そんな不思議な詩集です。

初めに「それではこれは何ですか」という詩があって、あれれ、何だこれは、え、そうなの?という感じでひっくり返ってしまって、そしてすっかりこの詩集に夢中になってしまいました。

 

それではあなたは何ですか

もちろんわたしはりんごです

お皿もフォークもりんごです

あなたも もうじきりんごです

 

不思議です。難しい言葉は何も使っていないのに、何か複雑な間違った扉を開いてしまったみたいで、別の世界に引きずり込まれる感覚です。

著者の松井啓子さんが本の帯に一言載せてらっしゃいます。

「あの頃、この世とそっくりで少しずれた別の世界、について私は考えていたと思うのですが、実は、今もその世界について考えています」

本書は1980年5月21日に刊行されたものをゆめある舎さんが新装復刊されました。

沙羅さんの美しい挿画、マットな感じの黒にくだものが並べられた装丁も本当に素晴らしく、bbbお薦めの一冊です。

夢中になってしまうのは「少しずれた別の世界」に知らない自分が知らず知らず惹かれているのか、行ってみたいのか。どうなんでしょう。

 

くだもののにおいのする日

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