本とわたしを離さないで

2015.03.24ブログ

「居心地が良い」ということ

先日、初めてお買い上げ頂いたお客様に「凄く居心地が良かった」と仰って頂きました。

とても嬉しかったのです。

この言葉は僕にとって最上級の褒め言葉で、他のどんな言葉よりも嬉しい。

というのは、ウチのお店はとても狭いので、「居心地の良さ」については自信がなかったのです。

とても窮屈な空間で身をかがめないと本が取れなかったりするし、横にならないと歩けなかったりする。ゆったり座れるソファがあるわけでもない。

だから「居心地が良かった」なんて言って頂くと、本当に?と一瞬思ってそれはすぐに過ぎ去って、飛び上がるほど嬉しい。

「居心地が良い」ってどういうことでしょう。

少なくとも、今回のお客様に取ってはお店の広さが重要だったわけではないようです。

お店はどんな場所であれ、自分の家ではないし、不特定多数の人と行き交うもので、公共の空間ということになります。

そこには少なからず自分には受け入れがたいものや、理解が出来ないこと、不快に思うこともあるかも知れない。趣味嗜好は様々。

その中で、またあのお店に行きたいな、と言って頂くのは本当に難しいことです。ウチは美味しい料理を出すお店でもないですから。

ただ、居心地が良い、と思って頂ければまた来て頂けるかも知れません。探していた本が見つかった!と同じくらい意味のあることだと思っています。

公共の場所でありながら、本を読む時間というのは圧倒的に一人ですから、その時間を大切に思って頂けると嬉しいのです。

せっかくご来店頂いたその時間を無駄にさせたくない。それを僕の手の届く範囲で、背伸びをせず、創造して行きたい。

「居心地が良い」ってどういうことなのか。それを考え続けるのはお店の使命であり、それは何故生きるのか、という人生の問いにも共通するものだと思っています。