2014.10.15ブログ
リチャード・バックは飛行機が本当に好きだった。飛行機を見ると頬ずりしてしまうほどだった。退屈な東京でのプロモーションから名古屋の小牧飛行場へ立ち寄ったとき、リチャード・バックは狂喜した。それは感動的な光景だったとあとがきに村上龍は書いている。十数年ぶりに肉親に会ったかのように振る舞っていたと。
僕にとっての飛行機は何だろう。20代のころはそれが見つからなかった。ああ、ダメだ、何て寂くて情けない人生なんだ、と思った。
作中で救世主であるドンが叫ぶ。「イリュージョンだ、この世の全てはイリュージョンだ、何から何まで光と影が組織されて、像を結んでいるだけなんだ、わかるかい?」 これはもちろんこの世の全ては幻だ、まやかしだ、壊してしまえ、と叫んでいるのはなくて(10代の僕が読んだらそう取ったと思う)、何も怖がることはないんだ、好きなことをしていいんだよ、と言っている。自由を謳い、好きなように振る舞うとどこからかこの小説のように反発してくる人々が現れる。この小説の舞台である1977年のアメリカでも。現代では人々と違うものの見方をすると袋叩きだ。
リチャード・バックも言っているように好きなことを見つけること、追求することは大変だと言っている。ドアを叩き続けるしか無いと言っている。発表から40年近くたった今もその言葉は生きている。ドアを叩き続ける、というのはフィジカルな行為で、自由や理想を空想することや、ネットで呟くことではない。行動し、飛行機に乗り、飛行機に触れなければ分からない。
どんな小さなことでも好きなことを追求している人は幸せだ。そんな人がたくさんいればが幸せな社会だ。周りの雑音なんて聞こえない、聞く暇もない、聞こえてこない。
好きなことだけをして生きてやる、この本を読むたびにそう思って、すぐに本を閉じる。そして少しの勇気を貰って、混沌とした世界のドアを叩いていく。
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