2014.09.13ブログ
著者、そしてこの短編集についての詳細は巻末にこの本を編んだ岡崎武志さんが書かれているのでそちらを読んで下さい。
ここには岡崎さんと夏葉社の島田さんとで庄野家を訪れるエピソードがあるのですが、島田さんがご来店頂いた時にその時の事を自慢されてしまいました。。
それはそれとしてここには岡崎さんが庄野作品を愛するきっかけとなった「山茶花」(さざんか)という作品について触れられています。「親子の時間」の最初に収められている短編です。
岡崎さんにとってこの作品がいかに大切なものであるのかが分かる、簡潔ながらも愛に溢れた文章です。この作品は「夕べの雲」という作品にも収められていて、私も過去に読んでいました。私も大好きな作品です。しかしもう一度読んでみると過去には分からなかった面に気付きました。分からなかったというよりも、感じることの出来なかったことに。
垣根の山茶花の花が咲いたころ、語り手の彼は夢を見ます。亡くなった父を支えるように二人で立ち、「大丈夫?」と聞くのです。夢からさめた後も父の背中や腕に触れた感覚が残っている。その翌日、彼は午前から昼までの時間を長男と二人で過ごす。その時はたと気が付くのです。あの「大丈夫?」という言葉は長男がよく口にする言葉であることに。 この長男が「大丈夫?」と言う時や彼の父と息子についての考察についてはもちろんもっと細かく描写されているのですが、この子どもの口癖が自分に移ってしまう感覚、ふと現れる自分の親、自分、子どもはやはり似ているのだな、という畏敬のようなもの、それは私に子どもが出来ていない時には決してわからないものでした。
本を読むということは決して新しい知識を獲得するためだけではなく、気が付かなかったこと、忘れてしまった大事なことを教えてくれる時間です。
「親子の時間」というのも恐らくそういった代え難い貴重な時間なのでしょう。
親子の時間
copyright © blackbird books all rights reserveds.