2018.07.21ブログ
先日閉店間際にお客様が入ってきて、店を一周すると唐突に質問された。
足取りで本を買いに来たわけではないことがわかっていた。
「本を早く読むにはどうすればいいでしょうか?一冊を読むのに一ヶ月かかることもあって。一週間で何冊も読んでしまう人がいると聞いたのですが、どうすればいいでしょうか?」
そんな質問をされたことは初めてだったのと彼女が何か急いでいる風だったので面食らったのだけれど、
「早く読もうと思ったことがないのでわからないです。僕も一ヶ月かかることはありますよ。ゆっくりでいいんじゃないでしょうか」と冷静に答えた。
彼女は少し意外な表情をして、「そうですか。ゆっくりでいいですか。わかりました。」と言って足早に去っていった。
この出来事はさて置き、本はゆっくりだからいいと思う。
飛行機ではなく、船のようにゆっくりと進んで行く。
そこから見える風景は何ものにも代えがたい。
結末には容易にたどり着かず、重く、かさばり、こすっても何も出てこない。
時間をかけることを半ば強制してくる。
いかに早く目的のものに辿り着くことが優先される世界でこんなに時代に逆行しているメディアは他にない。
ゆっくりと、たった一枚の紙をめくるときに感じるその圧倒的な重さ、それを感じられている時、僕は今を生きいていると思う。
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